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「長期相続登記等未了土地解消作業」とは

2023年03月08日

1 制度の概要
「ちょうきそうぞくとうきとうみりょうとちかいしょうさぎょう!」
・・・平仮名で書くと早口言葉のようですが、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(これも長い! )」に基づき、法務局により平成30年11月より実施されている制度です。
概要は、公共事業等の実施主体からの求めに応じて、長期間にわたり相続登記がされていない土地について、登記官が法定相続人を探索し、相続人の一覧図(法定相続情報)を作成するというものです。

2 作業(手続き)の流れなど
(1)まず、事業実施主体からの要望を聴取し、作業対象とする土地を決定します。
I 対象となる事業は、①法律上の根拠のある事業で、②国又は地方公共団体による公共性の審査に基づいて実施される事業です。つまり、専ら営利を目的とする事業は対象外です。
II 他力、事業実施主体は、当初、国・自治体に限定されていましたが、Iのような事業を行う主体は必ずしも行政に限られません。そこで、Iの要件をみたす限り、民間事業者が実施主体となる場合も対象となります。
III 相続登記が未了の期間についても、「30年(以上)」から「10年(以上)」に短縮され、対象範囲が拡大されました。
(2)次に、対象となった土地について、登記官が法定相続人の調査を実施します。
(3)調査終了後、登記官が職権で、長期間にわたり相続登記がされていない旨登記します。具体的には、「付記登記」というもので、「甲区(所有権に関する事項が記載されている部分)に「長期間相続登記等未了土地」と記載されます。
あわせて、法定相続人に関する情報(法定相続人を一覧図にしたもの)を作成し、登記所に備え付けます。要望を行った事業主体は、この情報を確認することで所有名義人の法定相続人を知り、用地取付などに活用することができます。
(4)なお、法務局は、法定相続人のうち1人(対象土地の近くに住んでいる、被相続人と親族関係が近しい、などの理由で任意に選ばれます。)に対し、相続の登記申請を行ってもらうよう通知書を発送します。
もっとも、法務局が、相続人調査にかかった費用などを請求することはありません。

3 利用実績
令和4年9月末日時点で、登記名義人9万9000人分(箪数にして約26万3000筆!)の法定相続人の調査を完了しているそうです【商事法務「NBL」No.1234 山本貴典氏「第4回 民間事業者も支援する法務局の長期相続登記等未了土地解消事業」より。】。
平成29年7月九州北部豪雨復旧・復興事業でも利用され、朝倉市の約2000筆の土地について、800人を超える登記名義人の法定相続人の調査が行われたようです。

4 さいごに
もっとも、この制度の利用は、あくまで公共性の高い事業に係る土地に限られますので、それ以外の土地の相続登記については、通常どおり、自己負担・自己責任で相続人の調査を行う必要があります。相続登記未了の期間が長ければ長いほど法定相続人が増え、登記完了までの時間も費用もかかります。
相続登記も含め、相続に関する相談・ご依頼は、お早めに行うことをお勧めします。

こたけひまわリ法律事務所
弁護士 小山明輝

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