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「書面>口頭・SNS 」~婚姻費用の事例からみる合意形成の方法~

2025年02月04日

l 「婚姻費用分担請求」「婚姻費用分担義務」とは。
民法第760条は、「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」と定めています。
例えば、別居後、夫婦の一方(収入の多い方)が生活費を支払わない場合、相手方は、収入の多い方に対し、生活費を支払うよう求めることができます。
これが「婚姻費用分担請求」です。
ちなみに婚姻費用分担義務の性質は、「自分(義務者)の生活を保持するのと同程度の生活を保障すべき」とする「生活保持義務」と解されるのが一般的です。

2 手続き
婚姻費用の分担については、まずは夫婦間で話し合いをすることになります。
しかし、話し合いがまとまらない場合、請求する側は、「相手方(義務者)の住居地を管轄する家庭裁判所」に対し、婚姻費用分担を求める調停(調停が成立しない場合は審判)を申し立てることができます。

3 合意形成の方法
(1)ところで、婚姻費用分担に関する具体的な合意(金額、支払期限など)が出来る場合、その方法は、法的には「口頭」でも「メールやSNS」におけるやり取りでも有効です。
(2) しかし、これらの方法では、後日、夫婦の一方から「そのような合意はなかった。」、あるいは「合意はあったが、金額が異なる(もっと高い、あるいは安い)。」などと争われた場合に困ってしまいます。
具体的には、まず「口頭」で合意した場合、合意の存在を裁判所(第三者)に証明するのは困難です。
また、「メールやSNS」におけるやり取りでの合意の場合でも、やり取りの経緯や内容によっては、合意の存在が認められないことがあります。
(3) この点に関する裁判例として、東京高裁令和5年6月21日決定があります。
この事案は、妻が夫に対し、婚姻費用分担を求めたのに対し、夫が「メッセージのやり取り」により「月額5万円とする合意があった」と主張した事案です。
第一審(原審)はその合意を認めたものの、高裁はその前後のSNSなどのやり取りから、「確定的な合意があったと認めるのは相当でない」として、夫の主張を認めませんでした。
(4)以上は婚姻費用分担の事例ですが、「書面化」の重要性は法的権利義務に関する合意形成、あるいは取引関係一般に妥当します。
取引契約など法的合意の存在やその内容を明確にする意味でも、また記録化することで後日の紛争を回避する意味でも、「合意書」「契約書」など書面化することを強くお勧めします。
(了)

こたけひまわリ法律事務所
弁護士 小山明輝

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